新創業融資制度とは?審査を有利にする5つのポイント
ビジネスは想定外の出来事の連続です。
トラブルがあったときや急に必要になったときのために、創業時は特に少しでも多くの資金を用意しておきたいものです。
日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用すると、無担保・無保証で融資を受けることができます。
決算書がない創業時の融資でチェックされる5つのポイントをしっかりおさえ、十分な創業資金を準備しましょう。
新創業融資制度とは?
新創業融資制度とは、日本政策金融公庫(以下、公庫)が運営する制度です。公庫は国が100%出資する政府系金融機関で、2008年に設立された比較的新しい金融機関です。
公庫が運営する他の起業家向けの融資制度と比べると、融資限度額が3,000万円と低めですが、無担保・無保証で融資を受けられます。
はじめての起業で実績のない方でも、利用しやすい融資制度といえるでしょう。
しかしその分、担当者に
- 事業が成功する見込みの高さ=返済能力
- トラブルが起きても対応できる資金的体力
といった点をしっかり伝える必要があります。
具体的に見ていきましょう。
新創業融資制度の審査5つのポイント
公庫は「国民一般、中小企業者(略)の資金調達を支援するための金融」を目的の一つとしており、起業家を積極的に支援しています。
しかし、どの起業家にも簡単に融資していたのでは公庫もつぶれてしまいます。
なので、返済の見込みがある、つまり事業として成功する可能性が十分にある、と判断できる起業家でなければ融資を受けることができません。
担当者を納得させ融資を確実なものにするためのポイントをご紹介します。
自己資金が十分にあるか
自己資金とは、一言でいえば返す必要がない自分のお金のことです。
新創業融資制度を利用するにあたっては以下の自己資金に関する要件があります。
創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
日本政策金融公庫ホームページ
例えば創業資金が1,000万円なら、そのうち100万円は自己資金でなければ新創業融資制度を利用することはできません。
さらに、これはあくまで利用を申し込むための最低条件であって、公庫の担当者の多くは「3割前後の自己資金は準備してほしい」と考えています。
実際に公庫のホームページの「創業計画Q&A」には「自己資金はどれくらいあればよいですか?」という質問にについてこのように答えています。
一概には言えませんが、「2013年度新規開業実態調査」(日本政策金融公庫 総合研究所調べ)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は27%となっています。(略)万一の時に備えて、数カ月分の経費相当分はとっておくなど、ゆとりを持った創業の資金計画をたてることが大切です。
日本政策金融公庫ホームページ
ゆとりをもって自己資金を用意することで、創業時に起こる様々なトラブルにも対応できる体力があることをアピールする材料になります。
創業する事業の経験があるか
創業する事業の経験があることは、その事業が成功する可能性をアピールする根拠になります。
例えば、それまでスーツを着て営業の仕事をしていた人が始めるカフェと、10年カフェでバリスタをしていた人が独立して始めるカフェとどちらが成功しそうか、といえば後者ではないでしょうか。
具体的にはどのくらい経験があればよいかについては、新創業融資制度を利用できる要件の中に以下のようなものがあります。
現在お勤めの起業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
日本政策金融公庫ホームページ
(1)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
これは「雇用創出等の要件」の一部で、必ずしも満たしていなければいけないわけではありません。しかし、6年の経験があれば、一定の評価を受けることができるというのは間違いないでしょう。6年は難しくても、3年以上の経験は積んでおきたいところですね。
成功のための計画が立てられているか
冒頭でも申し上げた通り、新創業融資制度で融資を受けるには自分の事業がいかに成功するか、借入金の返済の見込みがあるかをしっかり伝える必要があります。
これまで紹介した自己資金や経験はこれまで積み上げてきたものですが、一方でこれからどのように事業を成功させるつもりなのか、その道筋を担当者に示す必要があります。
具体的には以下の9つのポイントが重要です。
- 経営理念・ビジョン
- 事業概要
- 経験・経歴・実績
- ターゲット・市場ニーズ
- 商品・サービスの概要
- 事業を始めるうえでの強み・弱み
- 競合分析
- マーケティング計画
- 数値計画(収支計画・投資計画・資金計画)
この9つのポイントを見える化したものが「事業計画書」です。
しっかりした事業計画書を準備できれば、自己資金やこれまでの経験が不足していても担当者を納得させ、融資を受けることは十分に可能です。
資金の使い道は明確かつ妥当か
これまで説明した3つのポイントは事業が成功するかどうか、つまり融資した資金がきちんと返済されるかどうかに繋がっています。
その返済可能性と同じように公庫がチェックしているのが資金使途、つまり融資したお金の使い道です。
ずいぶん規模の小さい話に例えますが、子供が親に「おこづかいがほしい。でも使い道は言えない。」と言ってきて、簡単にお金を貸す親はめったにいません。
同様に融資を受ける際にも借りた資金の使い道を明確にする必要があります。さらに、その資金の使い道が妥当かどうかもチェックされます。
「ダイヤモンドを買うのでお金を借りたい」というのは使い道は明確ですが宝石商でもない限り妥当な資金の使い道とはいえず、融資を受けることはできません。
使い道を明確にするために二種類の資金のうち、運転資金の場合は「収支計画書」か「資金繰り表」、設備資金の場合は「見積書」を準備しておきましょう。
余裕資金はあるか
最近、審査のポイントとして新たにチェックされるようになってきたものに「余裕資金」があります。
余裕資金とは「事業資金以外にとってある生活のための資金」のことで、自己資金とはまた別の資金です。
自己資金をすべて事業につぎこんでその事業に失敗した場合、余裕資金がなければ本人やその家族の生活の破綻に直結してしまいます。
実際そのような残念なケースも多いらしく、それを防ぐために事業資金のほかに生活を維持できる余裕資金があるかチェックしているのです。
余裕資金は預金や貯金である必要はなく、生命保険の解約返戻金や投資しているお金でも問題ありません。
目安として、1年くらいの生活費を余裕資金として準備できるとよいでしょう。
新創業融資制度を上手に利用して創業資金を準備しましょう!
新創業融資制度は無担保・無保証で最大3,000万円まで融資を受けることができる制度です。
決算書がない分、以下の5つのポイントをしっかり準備しておくことが必要です。
- 十分な自己資金
- 創業する事業の経験
- 返済見込みのある事業計画書
- 明確かつ妥当な資金使途
- 生活を維持していくための余裕資金
これらのポイントをおさえて事業の成功の見通しと、計画通りにいかなくてもトラブルなどに対応できる金銭的体力があることを担当者に理解してもらえれば、十分な創業資金を準備できるはずです。