観光産業生産性向上資金とは?おもてなし精神を支える制度
政府は観光産業を、日本経済において重要な成長分野と位置づけています。
そのため、日本政策金融公庫でも観光産業事業者を支援する融資制度を設けています。
それが、「観光産業等生産性向上資金」です。
事業計画に必要な設備資金・運転資金を最大7億2千万円まで借り入れることができます。
今回はこの「観光産業等生産性向上資金」についてご紹介します。
観光産業等生産性向上資金の概要
「観光産業等生産性向上資金」は、観光産業などの生産向上および観光消費の底上げを通じた日本経済の活性化を図る中小企業を支援するものです。
新しく観光事業をはじめようとする創業者や、事業の多角化などにより新たに参入する事業者は残念ながら対象外となります。
制度を利用できる事業者
「観光産業等生産性向上資金」を利用できる事業者は、おおむね以下のように規定されています。
- 小売業、飲食サービス業またはサービス業の事業を営み、おもてなし規格認証を取得した事業者
- 訪日外国人旅行者の消費需要の取り込みを図る事業者
特に訪日外国人旅行者向けの事業者についてはさらに細かい規定がありますので、申請を検討する場合はかならず詳細を確認してください。
おもてなし規格認証とは、経済産業省での検討を経て、おもてなし規格認証機構が運用する民間規格制度です。
サービス品質を見える化し、高品質なサービスがそれにふさわしい評価を受けることで日本全体のサービス産業の底上げを図ることを目的としています。
ランクの高いものから、紫、紺、金の認証が付与され、この「観光産業生産性向上資金」においても融資の条件を決める要素となっています。
最大7億2千万円借りられる!融資内容とは
ここからは「観光産業等生産性向上資金」で借り入れた資金の使い道、融資限度額など具体的な制度の内容をご紹介します。
資金の使いみち
「観光産業生産性向上資金」で借り入れた資金の使いみちは「事業計画を実施するために必要な設備資金および長期運転資金」とされています。
具体的には以下の2つです。
- 合理化、生産及び販売能力の拡大のために必要な設備資金および長期運転資金
- 訪日外国人旅行者対応のために必要な設備資金および長期運転資金
設備資金とは、設備や資産を購入するためにスポットで発生する資金のことで、車やパソコン、不動産初期投資などが該当します。
運転資金とは事業をおこなう中で継続的に発生する水道光熱費や従業員の給与といった費用の支払い使われる資金のことです。
融資限度額・融資利率
中小企業事業であれば、直接貸付で最大7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)まで借り入れることが可能です。
融資利率は、日本政策金融公庫の定める基準利率や特別利率が適用されます。
最新の金利情報は日本政策金融公庫のWebサイトで確認してください。
日本政策金融公庫・金利情報(中小企業事業)のWebサイトはこちらから
中小企業事業においては2億7千万円がひとつのボーダーラインとなっており、2億7千万円を越えるとより高い利率が適用されます。
担保の有無を含む信用リスクによっても、利率は変わりますので注意しましょう。
もうひとつ、「小売業、飲食サービス業またはサービス業の事業を営み、おもてなし規格認証を取得した事業者」として申請する場合は、おもてなし認証規格のランクによって利率が変わります。
同じ2億7千万円以下の融資額であっても、一番ランクの低い金認証の場合は特別利率①が適用され、金より上の紫や金の認証を受けている事業者は、より金利の低い特別利率②が適用されます。
よりよい条件で融資を受けたいと考えるのであれば、規格認証の取得を検討してみるのもおすすめです。
融資期間と据置期間
融資期間は設備資金であれば20年以内、運転資金であれば7年以内になります。
あくまで最大で、という話なので実際はもっと短くなると考えるのが妥当でしょう。
据置期間はどちらの場合も2年以内です。
据置期間とは、本格的な返済が猶予される期間のことで、据置期間の間は利子のみの支払いで済みます。
注意が必要なのは返済期間の中に据置期間が含まれるということです。
例えば、返済期間5年で据置期間1年になった場合、最初の1年間は利子のみ支払えばOKですが、残りの4年で返済を終えなければなりません。
制度を活用して経営強化を目指しましょう
日本政策金融公庫の「観光産業等生産性向上資金」をご紹介しました。
設備資金・運転資金として最大7億2千万円借り入れることができる制度です。
さらに、おもてなし規格認証を受けていれば利率面などで優遇を受けることができます。
観光産業は地域活性化、雇用機会の増大などの効果が見込まれ、これからの日本の経済成長になくてはならない産業です。
これらの制度をうまく活用して、経営強化を目指すとともに、日本を盛り上げていきましょう!