金融機関から融資の返済を早めに求められた!断ってもいいの?

創業融資を受け、事業が軌道に乗り始めた時に、金融機関からいきなり「返済して」と言われたら、焦ってしまいますよね。
そんな場合、今動かせる資金はどのくらいあるか。と考えて、慌てて金策に走ってしまうかもしれません。
ですが、債権者には「期限の利益」という権利があります。
事業が軌道に乗って、多少の浮き沈みはあるかもしれませんが、期限の利益が喪失しない限り、急いで返済をする必要はありません。
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この「言葉」を知っているだけで、銀行との交渉は楽になる!

取引先の急な倒産や大型契約を失い「売上が大きく低下する」という状況になった場合、多くの経営者は、その事実を金融機関に対して、すぐに伝えようとしません。
すぐに良い状況にしてやろう!という気持ちと、状況が良くないことを周囲に知られることを恥ずかしいと思う気持ちもあるかもしれませんね。
そして、それを伝えてしまうと「融資しているお金を返済して欲しい」と言われてしまうかもしれない。という恐れの気持ちもあるでしょう。
ですが「伝えない」という判断は、大きな間違いです。
全ての経営者が知っておきたい「言葉」を、これからご紹介しますね。
金融機関から「すぐに返済して欲しい」と言われたら?

金融機関から「すぐに返済を」と言われたとしても、それを断ることができます。
そんな時には、この言葉を言ってみてください。
「期限の利益の損失事項になりますか?」
おそらく、金融機関の担当者は一瞬返答に詰まるでしょう。
その時、担当者は「法律に詳しい人かもしれない。無理を言うとこちらが不利になるかも…」と警戒して、無茶を言えなくなります。
ただ、金融機関からの申し出を断れば、今後の関係の悪化を心配するかもしれないと、思うかもしれません。
ですが、こんな無茶ぶりをしてくる金融機関は、今後融資をするつもりは無いと考えているでしょうし、そのような金融機関とも付き合いを続けることはおすすめではありません。
つまり無理をして返済をする必要は無いのです。
地域密着型金融機関は債務者の味方になりやすい

事業をおこなっていく上で、あまり良くない状況になったときには、まず、金融機関に報告することをおすすめします。
「マイナスな報告をしたら、次の融資がダメになるのでは?」と心配してしまうかもしれません。
ですが、地域密着型の金融機関は、基本的に経営者の味方になろうとしてくれる傾向があります。
早めに報告や相談をしておくと、一緒にどうするかを考えてくれることもあるのです。
当事者としての考えだけでなく、今までとは違う方向からのアドバイスを耳に入れるだけでも、打開策を思いつくこともあります。
早ければ早いほど、アドバイスが多くなるということです。
ぜひ、懇意の金融機関には、早めに報告と相談をしておくことをおすすめします。
ただし、大手の地方銀行や都市銀行では、そうならないことも多いので注意が必要です。
債務者の味方「期限の利益」

金融機関から「早く返済してほしい」と催促をされても、こちらに問題が無い場合は、返済をする必要はありません。
これは債務者の権利の一つで「期限の利益」と呼ばれる物にあたります。
「期限の利益」とは、「期限が定められていることによって債務者が受ける利益」のことです。
借金の返済期限が設定されている場合、債務者はその決められた期限までは返さなくてもいい。代金を請求されない。という債務者にとっては大きな権利になります。
そのため、金融機関から返済を迫られても、拒否しても問題はないのです。
「期限の利益の喪失」には「当然喪失事由」と「請求喪失事由」がある

債務者にとって大きな権利の「期限の利益」ですが、その権利が喪失してしまうこともあります。
それを「期限の利益の喪失」といいます。
この権利が喪失してしまうと、大きな影響がありますから注意が必要です。
権利が喪失してしまう事由に「当然喪失事由と請求喪失事由」があります。
当然喪失事由とは

当然喪失事由とは、下記のような事由です。
- 支払いの停止・破産・民事再生の手続き開始・会社更生などの手続き開始などがあった
- 手形交換所の取引停止処分を受けてしまった
- 債務者や保証人の預金や、その他の金融機関に対する債権に仮差押え、保全差し押さえ・差し押さえの命令・通知が発送された
- 住所変更の届出を怠り、債務者の責めにより、金融機関に債務者の所在が不明になった
事業がうまくいかず、どうにもならなくなってしまった場合は「当然喪失事由」に該当します。
請求喪失事由とは

請求喪失事由とは、下記のような事由になります。
- 債務者が債務の履行を一部でも遅滞した
- 担保物件に、差し押さえ・競売手続きの開始があった
- 債務者が、金融機関との取引の約定に違反した
- 保証人が上記か上記の中の一つに該当した
- 前各号の他、責務保全を必要とする、相当の事由が生じた
最後の「前各号の他、責務保全を必要とする、相当の事由が生じた」という項目は、金融機関の裁量にゆだねられる部分になります。
ですが、あまり濫用すると金融機関にとってはあまり良くない状況になってしまうことも多いので、この条項を使って無理を言ってくることはあまりありません。
金融機関から返済の請求があり、すぐに返済しなくてはならない場合は?

もしも、上記の当然喪失事由と請求喪失事由にあたり、期限の利益を喪失してしまった場合、どうなるのでしょうか。
この場合、金融機関から返済の請求があれば、すぐに全額を返済しなければなりません。
そして、銀行に預けているお金の引き出しも出来なくなるので、今後の事業経営に大きな影響が出てしまいます。
他の取引先への支払いだけでなく、家賃や光熱費などの引き落としも止められてしまいますので、注意が必要です。
大切なこの「言葉」を知っているだけで、銀行との交渉は楽に!

返済の請求が来た場合、この「それは期限の利益の喪失事項になるのでしょうか?」と尋ねてみてください。
事業の雲行きが怪しくなく、期限の利益の損失の事項に当たっていない場合は、早期に返済をする必要はありません。
金融機関に対しても「私たちは、法律を知っていますよ。」という警告にもなりますから、あまり面倒なことを言われることもなくなるはずです。
ですので、期限の利益の損失のおそれが無い場合は、この言葉を使って意思表示をしていきましょう。
銀行から「すぐに返済して」と言われても的確なアドバイスがあれば安心!

銀行から「すぐに返済して」と言われてしまうと驚いてしまいますよね。
そんな時には、たとえ自分が法律に関してそんなに詳しくなくても、専門家から適切なアドバイスがもらえたら安心です。
だからこそ、アドバイスを的確にしてくれる専門家と一緒に、事業経営を進めることがおすすめです。
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