コロナ融資のリスケは要注意!新規融資が難しくなる理由
新型コロナウイルスとの戦いも2年目が終わろうとしていますが、収束はまだ見えてきません。
コロナ融資の返済が目前に迫り、苦労している事業者も多いのではないでしょうか。
その場合、借り換えか契約条件変更を行えば、返済までの猶予(=据置期間)を延長することが可能です。
しかし、契約条件変更を行うと事業者にとってはリスクが発生することもあります。
今回は、据置期間の延長に契約条件変更がおすすめできない理由と、その背景についてご紹介します。
借り換えについてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。
事業者のコロナ融資返済が迫る
中小企業庁の調査によると、2020年12月末までに決定したコロナ融資のうち、据置期間を1年以内に設定した事業者は半数にのぼります。
具体的には、日本政策金融公庫で66%、民間金融機関で56%となっています。
つまり2021年10月現在、返済が間近に迫った事業者、あるいはすでに始まっている事業者が多数いるということです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響がまだ続いている現在の状況で、返済が始まっても返せない事業者が多いのではないでしょうか。
その場合には契約条件変更か、借り換えを行うことで据置期間の延長が可能です。
ただし、契約条件変更には「新規融資が難しくなる」という大きなデメリットがあるため、おすすめできません。
契約条件変更は新規融資が難しくなる
融資における契約条件変更とは、条件変更契約書を新しく交わすことです。
契約内容はそのままに、据置期間のみ延長してもらうことをいいます。
リスケや、リスケジュールと呼ぶこともあります。
リスケのデメリットは、「リスケを行う事業者=返済能力がない事業者」と判断されてしまうことです。
そのため、金融機関はリスケ事業者への新規融資をためらうようになってしまいます。
一方で、金融庁は金融機関に対し、「コロナ融資に関しては、リスケしている事業者に対しても積極的に新規融資に応じること」という旨の要請を出しています。
しかし、この要請には強制力がないため、実際には従っていない金融機関が大半というのが現状です。
金融機関がリスケ事業者に新規融資を行わない理由
なぜ、金融庁の要請にも関わらず、金融機関はリスケした事業者の新規融資に消極的なのでしょうか。
それは、リスケ事業者への新規融資が金融機関の減収につながってしまうからなのです。
リスケをすると、その事業者の「格付け」は下がります。
事業者の「格付け」が低くなると、金融機関はその事業者への融資に対する「貸倒引当金」を増やさなければいけなくなります。
「貸倒引当金」は金融機関にとって費用です。費用が増えれば収益が減ります。
これが、金融機関がリスケ事業者に新規融資をしたくない理由なのです。
借り換えならその後の新規融資もスムーズに
据置期間を延長するなら、借り換えの方がおすすめです。
借り換えは正常な融資として扱われるので、事業者の「格付け」は下がりません。
そのため、金融機関は「貸倒引当金」を多く積み増す必要がなく、新規融資が必要になったとしてもリスケしていた場合に比べてスムーズに進められる可能性が高まります。
新型コロナウイルス感染症の影響を考えれば、今すぐ返済をはじめられない事業者がいることは、金融機関も想定の範囲内です。
同額融資で、財務内容や経営内容によほどのことがなければ、断られる可能性はかなり低いでしょう。
借り換えにあたって事業者が注意すること
据置期間の延長には借り換えがおすすめですが、それでも注意するポイントがあります。
「民間金融機関による実質無利子・無担保制度」の制度は、2021年3月31日で終了しました。
そのため、借り換えの場合はそれまでゼロになっていた3年間の金利と保証期間全体の保証料が必要になるのです。
ちなみに、2021年12月末までに日本政策金融公庫で借り換えする場合は、この限りではありません。
これまでの内容を踏まえて、「民間金融機関による実質無利子・無担保制度」を利用した事業者の選択肢をまとめてみました。
- 据置期間の終了とともに返済をスタートする
- 借り換えで据置期間を延長する(金利、保証料の支払が発生する)
- リスケで据置期間を延長する(金利、保証料の支払は発生しないが、新規融資が難しくなる)
事業者は、現在そして未来の経営状況を踏まえて、このなかからいずれかを選択しなければなりません。
かなり難しい選択です。
迷ったら、士業やコンサルタントなど融資の専門家に相談してみるのもおすすめです。
最新情報をふまえつつ、専門家ならではの細かいアドバイスを受ければ、選ぶべき道も見えてくるでしょう。
困ったときは専門家に頼ってみよう
コロナ融資の据置期間を延長するにあたって、契約条件変更、つまりリスケがおすすめできない理由について解説しました。
リスケ後の新規融資は、金融機関の減収につながります。
そのため、金融庁の要請があったとしても、金融機関は積極的に行いたくないのです。
とはいえ、リスケをしたら100%新規融資ができなくなるわけではありません。
実現可能性と将来性のある事業計画書を提示できれば、新規融資を引き出せる可能性は十分にあります。
魅力的な事業計画書を作成したいと思ったら、融資の専門家に頼ってみるのはいかがでしょうか。
リスケか借り換えかで迷ったとき、あるいはリスケ後に新規融資を考えたとき、いずれにしても事業者の心強い味方になってくれることでしょう。