令和5年度:海外サプライチェーン多元化等支援事業を解説!
今回、「海外サプライチェーン多元化等支援事業」について解説します。
本事業は、新型コロナウイルス感染症の広がりによって、日本のサプライチェーン(製品や資源の供給網)の弱点が明らかになったことから、特にアジア地域での生産の多様化などを通じてサプライチェーンを強くし、日本とASEAN諸国の経済協力関係を強化することを目指しています。
海外サプライチェーン多元化等支援事業の概要
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本のサプライチェーンが脆弱(もろい)だということが明らかになりました。
具体的には、日本が他の国との経済的なつながりを持つ際に、特にアジア地域での生産の多様化が重要です。それによって、サプライチェーンが強くなり、日本とASEAN諸国の経済協力関係が強化されることを目指しています。
つまり、この支援事業では、日本の企業が海外での生産拠点を広げるための支援が行われます。
また、新しいアイデアや取り組みにも支援を提供します。これによって、サプライチェーンが強化され、日本とASEAN諸国の経済的なつながりがより強固になることが期待されます。
補助対象事業について
本公募では、以下の要領で2つのタイプ(製品開発型とバリューチェーン高度化型)について、実証事業および事業実施可能性調査事業の募集を行います。
製品開発型は、製品の原材料や加工物、または製品自体を生産する工場設備の導入を目指す実証事業です。
まず、バリューチェーン高度化型は、製品の国境を越えた流通や生産プロセスの効率化や円滑化を図るシステムの導入を目指す実証事業です。
実証事業とは、実際に適用可能な段階にある技術やシステム、制度などを試験し、その有効性や経済性などを確認することを指します。
次に、事業実施可能性調査事業(フィージビリティ・スタディ)とは、事業やプロジェクトを実施する前に、事業の収益性や技術的な可能性などを調査することを指します。
タイプによって事業概要や審査項目が異なり、また、実証事業と事業実施可能性調査事業では計上できる経費が異なるため、本公募要領を確認し、適切なタイプや実証事業、事業実施可能性調査事業に応募してください。
また、実証事業や事業実施可能性調査事業を通じて生産拡大やバリューチェーンの高度化を図る対象となる原材料や製品の範囲は、生産拠点の集中度が高い製品や部材(特に、ワクチン用注射針など、人々の健康に重要な製品や部材、またレアメタルやレアアース、半導体、電子部品など、サプライチェーンの上流工程に属し、途絶すると川下の産業に大きな影響を与える製品など)が広く対象となります。
【類型1:製品開発型】
日本とASEANのサプライチェーンを強化するために、製品や部材の生産拠点を多様化することが重要です。
このため、製品の試作機の開発や設計・開発を行うほか、試験的な設備の導入や本格的な生産設備の導入に向けた事業可能性の調査も行われます。
以下には具体的な事業例が示されていますが、これら以外にも製品開発型の事業が支援の対象となる可能性があります。
【製品開発型の実証事業の例】
特定の国で生産や加工が集中している原材料や加工物について、他の原材料や加工物を用いた試作品の製造やパイロットプラント(製品化や量産化前の試験・評価を行う設備)の建設を通じて、安定的な供給に向けた技術やコストに関する課題を抽出し、将来的な本格的な生産・加工設備の導入を目指すものです。
【製品開発型の事業実施可能性調査事業の例】
特定の国で生産が集中している部品や素材について、他の国での生産拠点の拡大に向けて、生産から販売までの事業化を実現するために必要な事業実施体制の検討や販売先市場の動向、競合他社の動向などの情報収集・調査・分析を行い、他社との差別化に関する検討を行います。
【類型2:バリューチェーン高度化型】
日本とASEANのサプライチェーンを強化するためには、ICT、ブロックチェーン、AIなどのデジタル技術を活用して、国際的なバリューチェーンの生産、調達、物流、サービス提供などを高度化する必要があります。
このため、試験的な設備の導入や試作機の開発、モデル事業の実施、さらには本格的なシステム導入に向けた事業可能性の調査も行われます。
以下には具体的な事業例が示されていますが、これら以外にもバリューチェーン高度化型の事業が支援の対象となる可能性があります。
【バリューチェーン高度化型の実証事業の例】
グループ企業内外でのクロスボーダーな部品調達、設計、組立などに関するデータ管理プラットフォームの構築を通じて、緊急時の物流途絶を避けつつ生産性を向上させるためのモデル事業を実施し、システム導入に向けた技術やコストの課題を抽出し、将来的な本格的なシステム導入を目指します。
従来の書面による貿易手続や越境取引に関連する各種手続をデジタル技術を活用して効率化するため、試験的にシステムを導入し、課題の抽出を行います。
国際物流における製品の位置情報、在庫情報、決済情報などをデジタル技術を活用して一括管理し、物流の効率化と途絶リスクの軽減を図るため、試験的な事業を実施して効果を検証し、将来的な本格的なシステム導入を目指します。
【バリューチェーン高度化型の事業実施可能性調査事業の例】
海外の生産拠点からの部品調達や組立に関する社内データベースの構築に向けて、実施体制や導入システムの検討、コスト分析などの情報収集や調査を行います。
医療物資や医薬品などの製品流通に関する国際的な流通管理や受発注業務の見える化をデジタル技術を活用しながら実現することで、サプライチェーンの強化を図ります。
こうしたビジネスモデルの可能性について情報収集、調査、分析などを行います。
これらの事業では、デジタル技術を活用してバリューチェーンの各段階を効率化し、国際的な取引や物流のリスクを軽減することを目指しています。
試験的な取り組みやモデル事業を通じて、技術的な課題やコスト面での課題を抽出し、将来的に本格的なシステム導入を実現するための準備を行います。
これらの取り組みは、日本とASEANのサプライチェーンをより強靭で効率的にするために重要な役割を果たします。
デジタル技術の活用によって、生産や物流などのプロセスがスムーズになり、企業間の連携や効率化が進むことで競争力を向上させることが期待されています。
補助金額・補助率・補助対象経費
【補助金額】 補助金の額は、類型1と類型2のどちらの場合でも以下の範囲内となります。補助金は、通常、事業が完了し、補助事業実績報告書が提出された後に支払われます。
- 実証事業:1,000万円から2億円までの範囲内で補助金が支給されます。
- 事業実施可能性調査事業:100万円から5,000万円までの範囲内で補助金が支給されます。
【補助率(全事業共通)】 補助率は、大企業と中小企業で異なります。
- 大企業:経費のうち最大で1/2までが補助
- 中小企業:経費のうち最大で2/3までが補助
なお、交付契約が締結された後に中小企業の定義から外れた場合は、補助率が変更される可能性があります。
【補助対象経費】 補助金の対象となる経費は、人件費と事業費などです。具体的な経費支出の項目例については、募集要項を参照してください。
【事業実施期間】
実証事業の場合、補助金交付契約日から2025年3月31日までの期間内で実施されます。一方、事業実施可能性調査事業の場合は、補助金交付契約日から2024年9月30日までの期間内で実施されます。
【公募スケジュール】
公募締切:2023年6月23日(金曜日)17時までに応募が必要です。
公募採択発表:2023年8月下旬を予定。
詳細な情報は公募に関連する公式ページを参照してください。
(引用:海外サプライチェーン多元化等支援事業 第八回公募(実証事業・事業実施可能性調査事業)の公募開始について)
補助金を活用して事業を円滑に
今回は、海外サプライチェーン多元化等支援事業についてご紹介しました。
チャレンジしたい事業やより事業を頑張りたい!そんな場合に、ぜひこの補助金を上手に活用して、事業を軌道に乗せていきましょう。