設備資金で借りた融資を運転資金にするのは違反になる?

事業を行う上で、融資によって得た資金を活用するのは、有効な方法です。
融資にはそれぞれ資金の使い道「資金使途」が設定されており、融資を受ける際には何に使用するのか金融機関などに説明する必要があります。
しかし、当初の設備資金を目的に借りた融資の費用が予想していたよりも安く収まってしまう場合があります。
その場合には、余った融資額を「運転資金に流用できるならしたい!」と考えられたことはございませんか。
今回の記事では、設備資金として融資を受けた資金を運転資金として利用した場合のリスクについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
初めて融資を受ける場合には資金使途は関係ない?

設備資金のための融資が信用保証協会付きでおりた場合には、事業者は設備に投資した金額の領収書を提出しなければなりません。
このような義務があるのであれば、資金使途を変えて融資の資金を使うのは不可能ではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし実際には、金融機関も信用保証協会も忙しかったり、そこまでチェックしていなかったりといった事情で、領収書を提出せずに融資金額を受け取れてしまうケースがあります。
つまり、初回であれば資金使途に沿わない融資資金の利用をしても、問題に問われずに済むケースがあります。
再度融資を受けたい場合に発生する問題

初回は領収書の提出も求められず、何とかやり過ごせたとしましょう。
問題になるのは、2回目に信用保証協会付きの融資を申し込みした際です。
なぜなら、2回目に融資を申し込みした際に、信用保証協会は前回の融資の際の領収書を確認します。
すると、金融機関から前回の融資の際の領収書を提出するよう求められます。
なぜいまさら前回の融資の資金使途を聞かれるの?

なぜこれから申し込む融資の資金使途ではなく、初回の融資の資金使途をいまさら気にするのだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
前回の融資の資金使途を確認する目的は、違反していないか確認するためです。
その証拠として、前回の融資時の領収書の提出を求められることになります。
もし、運転資金として融資を受けた場合には、その資金を設備資金に回していても特に問題となることはありません。
なぜなら、設備投資を行ったため運転資金が不足したので補充したと言い抜けられるからです。
しかし、逆に設備資金を目的に融資を受けた場合で、その資金を運転資金へ回した場合は厳しく問われることになります。
特定の設備を導入したいという名目で借りているのにもかかわらず、該当の設備を導入していない場合には、資金使途違反と判断されるでしょう。
資金使途違反をすると融資を受けられなくなる!

ではもし、資金使途違反と判断されてしまった場合には、どのようなペナルティが課せられるのでしょうか。
信用保証協会を通して融資を受ける場合に、資金使途違反が発覚すると保証を受けられなくなります。
その結果、信用保証協会付きの融資を受けることはできなくなります。
なお、一度違反が発覚した場合には、該当の融資の返済が終わるまで措置は継続され、その期間は新たな融資は受けられません。
資金使途違反をした事例

ここからは、実際に資金使途違反に問われた事例を1つ紹介します。
A社は新たな設備の導入を理由に、金融機関から設備導入の見積書の金額800万円の融資を受けました。
しかしいざ設備を導入する際、思わぬ割引を受けられ、実際にかかった費用は600万円で済みました。
つまり、200万円が浮いた状態になったため、A社は運転資金へと回します。
先に紹介した通り、金融機関からも特に変更後の金額の領収書を提出するよう求められもしなかったため、A社としては悪いことをしている自覚もありませんでした。
その3年後、A社は同じ金融機関へ今度は運転資金の融資を申し込みます。
ここで、信用保証協会から前回の融資の領収書を提出するように求められました。
領収書の額面は600万円しかないため、信用保証協会から差額の200万円の使用用途について確認されます。
特に悪いことをした自覚のなかったA社は「余った分は運転資金に利用しました」と正直に話したところ、資金使途違反に問われ、新たな融資について保証してもらうことができませんでした。
その結果、もちろん運転資金の融資も受けられません。
融資を受けた設備資金が余った場合の対処法

では、A社のように設備を導入を目的とした融資が、思いのほか安くなり資金が浮いた場合には、そのように対処すればいいのでしょうか。
この場合の対処としては、借り入れを行った金融機関を通じて、信用保証協会へ資金が余ったことを連絡するのが一番です。
多くの場合余剰な資金は返還を求められますが、まれに「運転資金へ回していい」と回答される場合もあります。
どちらにせよ、信用保証協会の指示に従っていれば、次回融資を申し込む際に資金使途違反に問われることはありません。
融資は目的に合わせて利用しましょう

紹介したA社のように、融資を受けた資金が余ったからといって、安易に運転資金へ回してしまうと後で痛い目に遭います。
このようなことがないよう、融資を受けた際はそれぞれの目的に合わせた利用を行うようにしましょう。
しかし、融資を受ける事業主はどのような場合に違反となるのか分からないという場合も多いことでしょう。
ですので、融資を受ける際は検討段階から専門家に相談して対処するのがおすすめです。
弊社でも随時相談を受け付けておりますので、お悩みの際にはお問い合わせください。