廃業後「経営者保証に関するガイドライン」で資産を守る!
「経営者保証に関するガイドライン」と聞くと、金融機関からの融資を受けた後に「経営者保証を解除するために活用するもの」と考える経営者も多いかもしれません。
「経営者保証を外す」ということは、経営者だけでなく経営者の家族を守ることにもつながります。経営者保証を解除するためだけのものではありません。
融資を受ける時には必ず「経営者保証に関するガイドライン」をチェックしておきましょう。
事業(法人)を廃業する時にも、経営者の味方になってくれる可能性があります。
もしも廃業する時に、このガイドラインを知らなければ、廃業後に残される資産の額は大きく変わるかもしれません。しっかりチェックしておきましょう。
Contents
知識の有無で、会社破産時に残せる個人資産の額が変わる?
以前は、会社(法人)が破産すると、金融機関から融資を受けていた経営者の個人資産も回収され「自己破産」という道をたどっていました。
ですが金融庁から金融機関へ、自発的に順守してほしいガイドラインである「経営者保証に関するガイドライン」が示され、経営者の個人資産がある程度守られるようになります。
ただし「経営者保証に関するガイドライン」に法的な拘束力はありません。
そのため、金融機関と経営者が「経営者保証に関するガイドライン」をもとに、話し合いをする必要があります。
金融機関と交渉をすることで、経営者が破産をまぬがれる可能性が高くなるのです。
金融機関の融資に関する対応が変わった
2024年4月から金融庁から金融機関への監督指針が変わりました。
以前との違いをご紹介します。
融資の審査が厳しくなる
今までの金融機関は、お付き合いのある経営者に対して、多少無理があっても融資を実行する傾向がありました。
ですが、今後は業績があまり良くない経営者に対して、安易な融資をおこなうことはありません。
- 資金繰りの支援をするべきか
- 経営改善・事業再生のための支援をおこなうべきか
金融機関は、上記の事を重点的に吟味して審査をおこないます。
リスケ審査も難しくなる
金融機関は、金融庁から指摘をされて、指導を受けることを避けたいと考えています。
そのため、リスケを申請してきた経営者に対しても「経営改善の可能性があるかないか」を慎重にチェックします。
ここで「経営改善の可能性が低い」と判断をされれば、「リスケ申請は却下」ということになるのです。
「廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方」とは
事業の経営がうまく行かない時、「廃業」を考える経営者は多いと思います。
ですが金融機関から、経営者保証付きの融資を受けていた場合、事業を廃業するだけでなく、経営者本人の資産も回収されてしまうため、廃業せずに会社を立て直すことを考える経営者は多いでしょう。
ですが、早めに「廃業」という決断をすれば「経営者保証に関するガイドライン」をもとに、金融機関と交渉をして合意を得ることができれば、経営者は「破産」しなくても債務整理をすることができるのです。
経営者保証に関するガイドラインを活用しよう
「経営者保証に関するガイドライン」を活用して保証債務整理をおこなった場合、保証人である経営者の手元に残すことができる資産は下記になります
【自由財産】
- 債務整理を申し出た後に取得した財産
- 生活に欠かせない家財道具などの「差押禁止財産」
- 99万円以下の現金
- 拡張が認められると考える財産
【インセンティブ資産】
- 一定期間の生活費に相当する額の資産(一定期間(保証人の年齢によって変動)×月額33万円)
- 「華美」ではない担保になっていない自宅(華美の定義は、個別の事案によって検討される)
- その他の資産
かつては「経営者の資産は回収され、経営者は自己破産」という状態でしたが、「経営者保証に関するガイドライン」を活用して、金融機関との合意を得られれば、生活ができる程度の資産は残せるようになりました。
小規模企業共済制度はどうなる?
小規模企業共済制度は、個人事業主や経営者にとっての「退職金」とも言える制度です。
会社に勤務している会社員には、退職金がありますが、個人事業主や経営者には退職金がありません。
月額の掛け金は1,000円~70,000円と自由に選ぶことができるので、活用している経営者も多いのではないでしょうか。
この小規模企業共済制度は「差押禁止財産」にあたるため、この制度の共済金で債務の返済をする必要はありません。
個人の資産として、自由に活用ができるので、もしもの時のために加入しておくことをおすすめします。
経営者保証に関するガイドラインは誰でも活用できる?
経営者保証に関するガイドラインの利用条件をご紹介します。
- 主債務者が中小企業である
- 経営者が保証人
- 債務者と保証人が誠実に情報開示をして弁済していた
- 主債務者が債務整理手続きをおこなう
- 債務者に経済合理性がある
- 保証人が不誠実な行為をしていない
上記の条件を全て満たしている必要がありますが、さらに下記も加わります。
- 債務が金融機関の保証(金融機関の保証以外の債務があっても、多額・多数ではない)
経営者保証に関するガイドラインを活用できる条件は「誠実」な経営者であることが大切です。
経営者保証に関するガイドラインの活用が難しいケースは?
経営者保証に関するガイドラインは、誠実な経営者であることが大切ですが、もう一つ大切な条件があります。
それは、上記でもご紹介した「債務が金融機関の保証(金融機関の保証以外の債務があっても、多額・多数ではない)」という点です。
事業を立て直すために、金融機関に融資を申請して資金調達をする経営者は多いでしょう。
ですが金融機関から融資を受けられなかった場合、会社名義ではなく、経営者個人の名義でカードローンや消費者金融などから借り入れをおこなってしまうケースもあります。
この借入の金額が大きくなると、経営者保証に関するガイドラインの適用が難しくなることもありますので、注意が必要です。
インセンティブ資産の金額の出し方
インセンティブ資産の金額は、どのように決定されるのでしょうか。
インセンティブ資産の金額の出し方は、下記になります。
- 将来を想定して(最大3年程度)清算した場合よりも、現在の時点で清算したほうが、回収の見込み額が多い場合の差額分
最後の「差額分」の部分がインセンティブ資産の金額です。
「経営者保証に関するガイドライン」を活用すれば、下記の資産が残される可能性があります。
- インセンティブ資産(華美でない自宅・一定期間の生活費・その他資産)
- 自由財産(99万円)プラス小規模企業共済制度
もしも「経営者保証に関するガイドライン」を知らずに、金融機関と交渉しなかった場合は「自己破産」となる可能性が高くなります。
全ての制度を把握することは難しいですが、融資を申請する時には、融資に関わる制度やガイドラインを確認しておきましょう。
廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」活用のメリット
ここで「経営者保証に関するガイドライン」のメリットを改めてご紹介します。
- 自宅を残せる可能性がある
- 返済しきれない保証債務の残額は、原則として免除
- 廃業後の生活費も確保
- 99万円以下の現金も個人資産として残すことが可能
事業が悪化して廃業する時に、金融機関からの融資が残っている場合、「経営者保証に関するガイドライン」を活用すれば、残せる資産もかなり変わります。
残る資産によって、今後の生活も変わってきますので、しっかり活用していきましょう。
事業の継続か廃業かを迷う時は、まず相談!
「経営者保証に関するガイドライン」は、「経営者保証を外す」ときに関係があるものと思われがちですが、金融機関から融資を受けているけれど「廃業」を検討している経営者にとっても、活用できるガイドラインです。
ですが法的な拘束力はないので、金融機関との話し合いが必要になります。
金融機関は、融資金を回収することが大切ですから、話し合いも難航してしまうかもしれません。
そのため、金融機関との交渉に不安を感じている経営者は多いのではないでしょうか。
そのような時は、しっかりとした知識を持つ専門家に相談して、廃業後の生活のためにしっかり交渉を進めていきましょう。