個人事業主の引越し手続き!忘れてはいけない3つのこと

個人事業主として事業を行っていると、「事務所が手狭になった」「自宅兼事務所としてやってきたけど、家族の都合で引越ししたい」「以前から狙っていた物件に空きが出た」などといった理由から、引っ越しを考えるケースも出てくるでしょう。
何かと忙しい引越しですが、忘れてはいけない手続きがあります。
今回はそのような引越しに欠かせない手続きを
- 税務署への手続き
- 保険関係の届出
- 引越し費用の経費計上
の3つに分けてご紹介します。
これから引っ越しを控えている場合や、検討する際に参考になれば幸いです。
税務署へ個人事業主が引越しの届出をするケースとは?

個人事業主が引越しする場合、税務署へ必ず届出が必要なのでしょうか?
引越し手続きが必要になるのは、あくまで納税地の移転が伴う場合です。
納税地とは、開業届を提出・申請した場所です。
自宅兼事務所の場合は同じ住所、別に事務所がある場合は事務所の所在地になっている可能性があります。
そのため、自宅は引っ越すけれど事務所は移転しないという場合は、届出は不要です。
1.個人事業主が引っ越す際に税務署に届出する書類

個人事業主が引越しする場合に、税務署に提出する書類は2つあります。
なお、振替納税を利用している場合は、その届出を含めて合計3つの書類の提出が必要です。
個人事業の開業・廃業等届出書

引越しをしてから1か月以内に提出が必要なのが、「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
名前が開業・廃業というので、一見引越しとは関係ないように見えるかもしれません。しかし、以下の画像で分かる通り、中央部分に移転の場合のチェック欄や記入欄がきちんと設けられています。

なお、この書類の提出先は移転前の納税地を管轄する税務署です。
提出方法は、郵送または窓口に持参します。
書類自体は国税庁のサイトから印刷可能です。
なお、本来は従業員がいる場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の届出も必要になります。
しかし、この「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出した場合は、不要となります。
所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書

もうひとつ提出が必要なのが、納税地の変更届です。
特に期限は定められていませんが、なるべく早めに提出する必要があります。
この書類の提出先も移転前の納税地を管轄する税務署で、窓口に持参か郵送で手続きできます。
以下のサイトから書類は印刷可能です。
[手続名]所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続|国税庁
【振替納税の場合のみ】納付書送付依頼書・預貯金口座振替依頼書

最後に振替納税制度を利用している場合は、「納付書送付依頼書・預貯金口座振替依頼書」の再提出が必要です。
手続きが遅くなると自動引き落としがされず、支払いが遅れてしまう可能性もあります。
忘れないうちに早めに手続きするようにしましょう。
書類は国税庁のサイトに印刷する手書きタイプと、直接入力してから印刷できるタイプが用意されています。
提出先は、移転先の管轄税務署かご利用の金融機関です。
2.保険関係の個人事業主の届出

自宅兼事務所の場合には、その他に個人として住民票の移動や運転免許証の住所変更などが必要になるでしょう。
税務署に提出する以外に忘れがちな手続きについて、ご紹介します。
労働保険に加入している場合

労働保険に加入しており同一管轄地域内での移転の場合は、「名称、所在地等変更届」の提出も必要です。
提出期限は、移転後10日以内で、提出先は労働基準監督署か公共職業安定所に提出します。
管轄の地域外、例えば県をまたいでの移動の場合は、移転元の労働基準監督署で労働保険料の清算が先に必要です。
清算が終わった後で移転先の労働基準監督署に改めて、「労働保険関係成立届」および「労働保険保険料申告書」の提出をします。
健康保険・厚生年金に加入している場合

国民保険や厚生年金に加入している場合も、手続きが必要です。
まず、「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届」については以下のサイトに詳しく記載があります。
事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き|国民年金機構
そしてもう一つ提出が必要なのが、「健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地名称変更(訂正)届」です。
管轄内と管轄外に移転の場合、それぞれのサイトが用意されています。
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)|国民年金機構
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)|国民年金機構
期限は5日以内なので、早めに提出できるようにしておきましょう。
3.個人事業主の引越し費用は経費に計上を忘れずに!

事務所と自宅が別で、今回移転するのが事務所という場合は、基本的に全額経費として計上できます。
ただし、自宅兼事務所の移転となると、家事按分(かじあんぶん)が必要です。
家事按分(かじあんぶん)とは、事業主が自宅で仕事をする際、生活費と仕事の費用を明確に区別できない場合に、ある一定基準の割合で分けることです。
経費として計上できるのは、あくまで仕事で使っている分だけです。全額ではなく自宅分から差し引いた金額だけになります。
「自宅だけを引越しして事務所は移転しない」というケースでは、経費に計上はできませんので注意しましょう。
引越しで忙しくても手続きは確実に!

荷物をまとめたり、ガスや水道、電気などを手配したりと、引越しではさまざまな作業が必要です。
自宅兼事務所として利用していた場所を移動するのであれば、まさに「猫の手も借りたい」状況ではないでしょうか。
まずは、何をすればいいか「ToDoリスト」を作成してから取り掛かると、抜け漏れがないのでおすすめです。