【金融機関】決算書が赤字!無理にでも黒字にするべき?
決算は、事業の1年間の振り返りです。
決算書を作成することで、1年間の事業の成果を可視化することができます。
「これから事業をどのように発展させるか」を考える時期でもあるので、しっかりと作成していきましょう。
もしも赤字の場合は、これから事業を再建させなければなりませんから、資金調達を視野に入れることを考えると思います。
資金調達の方法として「金融機関の融資」を視野に入れる経営者は多いのではないでしょうか。
事業が黒字の場合は、問題ないのですが「赤字だった。でも無理をすれば黒字化できるかも」という場合は、悩んでしまいますよね。
金融機関から融資を受けるためには、赤字は避けたいですが、無理をしてでも黒字化しないといけないのでしょうか。
Contents
無理をしてでも決算書の赤字は回避すべき?
金融機関から融資を受けるためには、事業が軌道に乗っていることの証明として「決算書は黒字」と、考えている経営者は多いのではないでしょうか。
近い将来、金融機関から融資を希望している場合なら、決算書も黒字の方がいいかもしれません。
ですが金融機関から融資を受けることが可能かは、決算書が黒字であることが条件ではありません。
「無理して黒字化」する必要はある?
決算書が黒字であることは、理想的な姿ではないでしょうか。
決算書が黒字であれば、金融機関から融資を受けることができる可能性も高まるでしょう。
ですが「無理をして黒字化させている」という場合は、あまり理想的な姿では無いですよね。
金融機関からの印象を良くするために「無理に黒字化にする」ことは、金融機関との関係にどのような影響を与えてしまうのでしょうか。
決算書を黒字にしておいた方がいい状況は?
決算書を黒字にしておいた方がいい状況とは、どのような時の事なのでしょうか。
例えば下記のような時ではないでしょうか。
- 近いうちに設備投資の予定がある
- 資金繰りが厳しくなる状況が半年後くらいにやってくる可能性がある
金融機関は、決算書が赤字の企業には、融資審査が厳しくなる傾向があります。
状況が悪くなる前に融資を受けたいと思っている場合は、決算書を黒字にしておいた方がいいかもしれません。
急いで融資を受ける必要が無い場合は赤字でもいい?
決算書が黒字であることは、とても良いことですが、無理に黒字化にしなくてもいいのではないでしょうか。
それは「借入はあるが、融資申請の予定はない(金融機関に年に一度決算書を提出)」という場合です。
現状、融資を申請する予定が無いのならば、無理に黒字化させなくても、赤字で計上しても問題なさそうですよね。
決算書の内容も大事だが、金融機関との関係性も重要
融資を少しでも有利に進めるため、経営状態が良くない状態(赤字)を回避するために、無理に黒字化させている決算書を、金融機関に提出して申請することになるでしょう。
金融機関は、決算書を見て融資の可否を考えますが、融資の決定は決算書だけではありません。
金融機関は関係性を重要視している
金融機関の融資審査はシビアですが、金融機関の融資の決裁をしている人たちは、同じ人間ですから感情があります。
親密な関係の人が困っていたら「助けたい」と思うのではないでしょうか。
金融機関で融資の決定権を持っている人たちも同じで、親密な関係の経営者に対しては「力になれれば…」という考えを持っているのです。
ですので、決算書が赤字の場合でも、多少は目をつぶってくれる可能性があります。
あまり良い関係を築けなかった場合は、無理に黒字化した決算書を提出してしまったら、融資を断られる理由の一つになる可能性が高いのです。
ですので、普段から金融機関と良い関係を作っていくことも大切ですよ。
金融機関との関係が良くても、融資は返済の可能性を重要視
金融機関の融資審査は「融資金をきちんと返済できるか」が焦点になります。
融資を申請する予定が無い場合は、無理な黒字化はしなくてもいいかもしれませんが、金融機関と良い関係であっても、赤字が続いていると助けることもできませんよね。
融資を考えているならば、決算書が黒字化している方がいい場合もありますので、下記でご紹介しますね。
融資を受ける予定がなくても決算の黒字化を推奨する3つの理由
金融機関から融資を受ける予定が無くても、決算書を黒字化しておく方がいいかもしれません。
下記でその理由をご紹介します。
①「財務内容の連続性」を気にする金融機関が多いため
金融機関との関係が良くても、赤字と黒字を繰り返しているよりは、黒字化しておく方が、金融機関からの印象は良くなります。
懇意にしている企業でも、財務内容に波が無い方が金融機関は安心感を得ることができるので、融資申請をする予定が無くても、できるだけ黒字決算にしておきましょう。
②不測の事態に備えるため
しばらく融資申請の予定は無くて、事業が順調に進んでいても、下記のようなトラブルが発生することもあります。
- 機材が故障・破損
- 災害
- 景気が悪化
自分たちの資金だけで、対処ができれば問題はありません。
ですが「ギリギリで事業を運営している」というケースもありますよね。
自己資金で対応ができない場合は、金融機関に融資を申請しなければ事業の継続も難しくなるでしょう。
③経営者保証を解除しやすくなるため
黒字決算にしておくと、公庫や信用保証協会の保証付き融資を利用する際に、経営者保証を外すという選択肢が生まれます。
下記のデメリットがありますが、経営者保証を外すことを希望している経営者は多いのです。
- 借入の金利が上乗せされる
- 返済金額が上がるため、毎月の支出が増える
経営者保証とは、経営者が企業の連帯保証人になるということです。
経営者保証を外すことは、経営者本人だけでなく、経営者の家族を守るという意味もあります。
家族を守るために、経営者保証を外すため無理をしてでも決算書を黒字化しておきたいと思う経営者も多いのです。
「事業者選択型経営者保証非提供制度」と「経営者保証免除特例制度」
金融機関には、民間と公的な立場の金融機関があります。
公的な金融機関である日本政策金融公庫(公庫)は、創業融資でお付き合いがあるという経営者が多いのではないでしょうか。
そして信用保証協会も、さまざまな融資制度でお世話になっている経営者も多いでしょう。
公庫や信用保証協会は、事業を運営している経営者の人たちにとっては、最初にお世話になった金融機関・融資制度かもしれません。
決算書を黒字化しておくと、下記の制度を活用できる可能性があります。
信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供制度」
事業者選択型経営者保証非提供制度とは、保証料を上乗せさせることで、経営者保証の提供を受けない制度です。
この制度を利用するためには、下記の要件を満たしている必要があります。
- 直近の決算で債務超過(純資産の額がゼロ以上)
- 直近2期の決算で、減価償却前経常利益が連続して赤字ではないこと
保証料の上乗せ分は、下記になります。
- 上記の案件を両方とも満たしている場合…0.25%
- 片方のみ満たしている場合…0.45%
減価償却費を計上させずに、決算が黒字になっている場合は「減価償却前経常利益が黒字」となり、この制度の利用が可能になります。
日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」
経営者保証免除特例制度は、上記で紹介した信用保証協会の制度と同じように「利用できる要件」があります。
その要件は「直近2期の決算で、減価償却前経常利益が2期連続で赤字ではないこと」です。
上乗せ利率は、要件によって「上乗せ無し~0.3%」と幅がありますので、しっかり確認しておきましょう。
この制度を活用したいと考えている場合は、無理をしてでも黒字化にしておいた方がいいかもしれません。
スムーズな融資のための「金融機関の考え方」を取り入れることが成功への道!
金融機関は、独自の考え方や判断基準を持っています。
スムーズに資金調達を成功させるためには、金融機関の考え方や判断基準を知っておくことが大切です。
決算書を無理をしてでも黒字にしておくか、それとも赤字のままでも良いのかは、それぞれの状況によって違います。
無理をしてでも黒字にしておく方がいいケースもありますので、知識を持った専門家に経営状態をみてもらい、アドバイスを受けてみることがおすすめです。